恋愛のエゴや核心を突こうとした究極のラブストーリー!?映画『悲夢(ヒム)』
公開日:
ラブストーリー
レビュー・感想 ※ネタバレあり
韓国の鬼才といわれているキム・ギドク監督がオダギリジョーをイメージして書き下ろしたという脚本の映画です。この映画で話題になった、オダギリジョーだけ日本語で話しているが韓国語を話す登場人物にも普通に会話が成り立たせるという言語を放棄する方法は以外にもすんなり観ることができました。
私はこの言語の放棄によって、この映画の全体のストーリー自体が、橋から落下して瀕死の状態だったジンの観た最期の夢だったようにも思いました。(これはあくまで私の勝手な推測です…。)
この映画ですが…観る人を選ぶ映画です。監督のファン、韓国映画を見慣れている人…。本当にラブストーリーと言っていいのかと思うくらいグロテスクなシーンもありです。見方によっては恋愛のエゴや核心を突こうとした究極のラブストーリーではなのかもしれません。
監督なりの狙いがあってなのかわかりませんが前半の繰り返されるジンとランの言い争いは台詞を削るべきだったのではないのかなと思うほど多くとにかくひたすらヒステリックな両者に引いてしまったうえ、オダギリジョーの台詞が「なんで〜なんですか?」「どうしてですか?」と、とにかくしつこい疑問系が多く「夢でつながっている不思議な男女」という設定がちょっとギャグのようにも見えてきてしまい残念でした。
一転、後半の幻想的なシーンの数々、夢でつながりお互いの心の痛みを分かち合い一心同体のように自然と惹かあう展開やとくにランが拘留されてからの監獄での描写はとてもすばらしかったです。ラストのジンの周辺を舞う一つの黄色い蝶の姿の美しさはとても鮮烈に脳裏に残りました。
前半の騒々しさは後半の名場面の数々を印象づける為だったのか何なのか…?
これだけ美しい絵を映像化できる監督だけに何らかのメッセージがあるように思いますが、私にはまだわかりません。
この映画は監督自身が公開の数年後明かしていますが、ラン演じるイ・ナヨンが首つり自殺を図るシーンで本当に彼女の首が絞まってしまい一時意識を失うという事故が起きていてイ・ナヨン自身は事故の後遺症もなく今も女優業を続けていますが、監督自身はとてもショックを受け3年後公開の『アラリア』まで監督業ができなくなってしまうという出来事が起きています。
イ・ナヨンがご無事で、ギドク監督も監督業を再開できてよかったと思います…。観賞後知った事実にびっくりしてしまいました。
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